人生初のシーンワークの続きです。
俳優として参加した僕は、イヴァナチャバックのメソッドに沿って映画「クレイマー、クレイマー」の脚本分析をし、またインナーワークを通して代替者を決め、本番に向けた準備をしていきました。
その時のシーンワークは、
12個あるステップのうち、step1〜step4を重点的に理解し学ぶ、
そういうコンセプトで、基本をマスターしたいと考えていた僕には、うってつけだったと思います。
step1〜step3は、キャラクター視点で脚本を分析する作業。そしてstep4からは、演者自身のインナーワークで脚本をパーソナル化していく作業です。
この、
- キャラクター視点での作業(ステップ1〜3)
- パーソナル化の作業(ステップ4〜)
は、イヴァアのテクニックを身につける上ではしっかりと理解する必要のある基礎中の基礎であり、また、もっとも重要な部分です。
あなたがイヴァナのテクニックを身につけ、世界で勝負したいと考えている人なら覚えておいたほうがいい英単語。これから僕のレッスンやワークショップでも、英単語の方でレッスンを進めていく可能性があります
是非、しっかりと理解してほしいと思います。詳しくは「イヴァナチャバックの演技術」で確認してみてください。
イヴァナの魔法:エモーショナルダイアリー
さて、記事タイトルにもした「本当はやりたいことをやらないなんて、意味わかんねえよ!」
このタイトルはメソッドの4つ目のステップ、代替者(substitution)を見つけるインナーワークをしていた時に湧き出してきた、僕のむき出しの感情そのものの言葉です。
ま、その話はこれからしていくんですが、まだ「イヴァナチャバックの演技術」を読んでない人もいるかも知れないので、簡単に「代替者(substitution)」について話しておきますね。
脚本をパーソナル化する(俳優自身の物語に書き換える)にあたり、まず、代替者を見つけるという作業があります
代替者=つまり、目の前の俳優をあなたの知っている誰かに置き換える(代替する)テクニックです。
その代替者を見つけるのに使うツールが、「エモーショナルダイアリー(感情日記)」になります。
例えば、あなたが演じるキャラクターAの「シーンの目的」が、
- 私はあなたに、私を傷つけることなく愛してもらう必要がある
- I want you to love me without hurting me
だとしたら、
演じるあなた自身の人生の中で、
- 傷つけることなく愛してもらう必要があるのは、一体誰なのか?
それに該当する人物を、エモーショナルダイアリーというツールを通して見つ出していくわけです。
角度を変えて言い換えるなら、
- 今までの人生で、愛してもらいたかったのに愛されず、深くあなたを傷つけてきた人
を探すことになります。
日本語では「感情日記」と呼ばれていますが、自分の潜在意識に眠っている過去の体験記憶(感情の伴った記憶)へアクセスするテクニックです
詳しいやり方に関してはここでは割愛しますが、あなたが忘れていると思っている過去のトラウマ的な体験や深く傷ついた記憶など、ネガティブな記憶に意図的にアクセスしていって掘り出すわけです。
一度エモーショナルダイアリーをやってみればわかりますが、過去の体験など覚えてないだろうと顕在意識(普段の意識状況)で思っていても、実はしっかりと潜在意識の中に記憶されていたことに驚くのではないかと思います。
そして、その時に出てきた感情を、あなたの勝ち取りたい「シーンの目的」を掴むための燃料として使う。
これが、シーンの目的を取るために「代替者を選ぶ理由」です。
キャラクターAのシーンの目的「私はあなたに、私を傷つけることなく愛してもらう必要がある」と、あなたの見つけた人物(代替者)に対する目的が、ピタッと重なったとしたら、どうなるでしょう?
これが、パーソナル化(脚本の内容を俳優自身の物語に書き換えていく)という技術です。
理解できるでしょうか?
書籍を読んだことのない場合は、いまいちピンと来ないかも知れませんが、ま、これも本を読むなりワークショプに参加するなりして、深い理解に繋げていってください。
そしてこの作業と実践を通じて、世界でたった一人だけの、あなたにしかできないユニークな演技ができる、魅力的な俳優になって欲しいと思っています。
僕が許せなかったのは、
今、少し説明したエモーショナルダイアリー。
映画「クレイマー、クレイマー」を演じるあたり、作業するなかで出てきた代替者は、僕の場合、まず母親でした。
エモーショナルダイアリーで解放された僕の潜在意識から、母親との過去の記憶がどんどんと映像や声として溢れ出し、僕は涙が止まらず、嗚咽していました。
その中で、僕は、
自分に嘘をついて生きてきたことにしっかり気づいたわけです。
- あなたは、誰かから、あなたって好きなことやってるよね、いつも楽しそうだよねって言われたことがありますか?
という質問でした。
僕自身、若い頃から色んな人に「位部って好きなことをやってるよね」とよく言われてきました。
でも、正直に打ち明ければ、実は、本当に心からやりたかったことを僕は断念していた。それに、そのことから目を背けて「好きなことをやっている」と無理やり思い込もうとしてきたように思います。
僕の潜在意識の奥に眠る感情がまだ生々しく存在していることに、エモーショナルダイアリーを通して確信した瞬間でした。
もちろん、映画やドラマを監督、演出するという仕事は大好きです。ですが、ただ、過去の自分がした選択が許せなかった。
長い話になるので詳しい話はまた別の機会に譲りますが、簡単に言うと、僕は本当にやりたいと心から願っているにも関わらず、大切な人の反対に怯み、チャレンジが失敗した時のことばかり考えて、結局は、自分の気持ちを封印したわけです。
そして、それは若い頃の僕を非常に苦しめただけではなく、つい最近まで延々と僕の心を傷つけ苦しめ続けてきました。
なにが苦しかったか。
自分の本当の気持ちに気づいているのにも拘らず、自分に嘘をついて、チャレンジさえしようとしなかった、アクションしなかったことです。
もうお判りかも知れませんが、僕は本来、裏方ではなく表舞台に立って自分の体を使って何かを表現したいと考えている人間でした。
本当はやりたいことをやらないなんて、意味わかんねえよ!
これは、僕が、過去の僕自身に対して大きな怒りを感じて吐き出した言葉そのものです。だから、もう二度と自分の心の声に嘘をついて生きたくない。心からやりたいことなのに諦めたくない。
あなたの人生は、あなたの選択で決まる
あなたにも是非覚えておいてほしいことがあります。
あなたの人生には限りがある、ということです。いつか終わりが訪れますし、それがいつかなんて誰にも予想できません。
だからこそ、他人に押し付けられた価値観や世の中の価値観、常識だけで判断してしまおうとせず、まずは自分自身の心の声、内なる声に耳を傾けて、自分の気持ちに素直に行動して欲しいと思います。
あなたの人生の主人公は、あなたです。
あなたの人生は、あなた自身の選択とアクションで決まることを忘れないで欲しい。
そして、この世界を、もっとより良いものにするために、あなたは生まれてきたことを忘れないで欲しい。人生の先輩としてそう思っています。
大丈夫、あなたならきっとやり遂げられます。僕はあなたをいつだって応援しています。